むちうちにおける慰謝料の相場
1 慰謝料の種類
「慰謝料」という言葉は知っていても、具体的にどのように計算するのかといった詳しい内容を把握している方は多くないかと思います。
まず、慰謝料には種類があり、それぞれ算定方法が異なります。
交通事故によりむちうちのなどの傷害(お怪我)を負った場合、治療期間または日数に応じた慰謝料が発生します。
また、後遺障害が認定された場合は、後遺障害を理由として別途、慰謝料が発生します。
上記2つの慰謝料を区別するため、以下では、お怪我に対する慰謝料を「入通院慰謝料」、後遺障害に対する慰謝料を「後遺障害慰謝料」と記載します。
2 入通院慰謝料の算定方法
入通院慰謝料には、自動車賠償責任保険における算定方法と、一般的な示談・裁判(訴訟)での算定方法の2つがあります。
⑴ 自動車賠償責任保険における算定方法
事故日から治療終了日までの日数と、通院日数を2倍した日とを比較し、日数が少ない方に対し、1日当たり4300円を乗じた金額が、慰謝料の額となります。
最終受診日において「中止」とした場合は、最後の受診日にさらに7日間を加えた日が治療期間の最終日となります。
ただし、怪我に対する自動車賠償責任保険の保険金の上限額は120万円とされています。
これは、医療費や休業損害なども含めた賠償金の上限であるため、医療費など他の費目に対する支払いによって、上記方法により算定した慰謝料の一部しか支払われない場合があります。
例えば、医療費が50万円、慰謝料が100万円発生したとして、先に医療費50万円が全額支払われていた場合には、慰謝料としての自動車賠償責任保険からの支払い額は、70万円(120万円-50万円)にとどまります。
⑵ 示談・裁判における算定方法
自動車賠償責任保険における算定方法が、日数に応じて算定するのに対し、示談・裁判では、期間に応じて算定します。
例えば、むちうちで半年間通院した場合の慰謝料は89万円であり、通院日数が極端に少ない場合を除けば、通院日数の多い、少ないにかかわらず、金額は一定となります。
ただしこれは裁判での基準です。
示談の場合は、裁判まで至らずに解決することを理由に、これより減額された金額となることが通常です。
また、事故様態等によっては通常よりも慰謝料が増額されるケースもあります。
⑶ 上記2つの算定方法の比較
一般的には、示談・裁判における算定方法による慰謝料の金額が、自動車賠償責任保険における算定方法による金額を上回ることが多いです。
しかし場合によっては、自動車賠償責任保険における算定方法による金額の方が、示談等の算定方法による金額よりも高額になることがあります。
例えば、通院日数が多い場合や、被害者に過失相殺による減額が発生する場合などです。
自動車賠償責任保険における慰謝料は、通院日数が多いほど増額します。
また、自動車賠償責任保険からの保険金支払いは、示談等における支払いと異なり、被害者に7割以上の過失割合がある場合を除き、過失相殺による減額をしないこととされています。
このような特徴から、どちらの方が高額になるかは人それぞれ異なりますので、両者を比較してしっかり確認することが大切です。
3 後遺障害慰謝料の算定方法
後遺障害に対する慰謝料は、後遺障害等級に応じて額が定められています。
むちうち症の後遺障害が認められた場合、他の後遺障害がないときは、後遺障害等級は14級となることが一般的です。
この等級に対する自動車賠償責任保険における金額は32万円となります。
裁判における慰謝料額は110万円となり、示談の場合の金額はこれよりも少ない金額となります。
もっとも、むちうちで後遺障害の等級認定を受けるためには、通院の段階から適切な対応をすることが重要となります。
むちうちで後遺障害が残るか不安な場合は、早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
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