民事再生と個人再生の違い
1 民事再生法
民事再生手続は、民事再生法で規定された手続きであり、個人再生もこの法律に規定されています。
民事再生手続は、ある程度の規模のある法人が利用することを想定して制度が設計されているため、手続は煩雑で、費用も高額になります。
そこで、個人の方も民事再生を利用しやすいように手続きを簡素化し、それに伴い費用も低額になるようにしたのが個人再生で、民事再生法の13章に「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」として規定されています。
本稿では、通常の民事再生と個人再生の違いについてご説明します。
2 個人再生は利用者が限定されています
通常の民事再生は、法人、個人問わず利用できますが、個人再生は、その名のとおり個人(法律用語で自然人といいます)のみ利用できます。
また、通常の民事再生は、債務者の債務額について上限はありませんが、個人再生の場合は、債務額の上限は5000万円となります。
債務額が5000万円を超える場合は、負債額の大きい倒産事件になりますので、手続も厳格な通常の個人再生しか使えないということになります。
なお、この債務額には、住宅資金特別条項を利用する場合の住宅ローンは含まれません。
3 個人再生は手続きが簡易です
まず、通常の再生手続では、民事再生法99条以下の債権調査規定にしたがって債権額の確定の手続きが行われ、再生債権者表に記載されると確定判決と同一の効力が認められます。
他方、個人再生にはこの債権調査規定は適用されず、債権額は手続内で確定されるだけで、確定判決と同一の効力は与えられません。
また、通常の民事再生における再生計画案の決議では、一定数以上の同意を得られないと認可されませんが、小規模個人再生では、積極的な同意は不要で、一定数以上の不同意がある場合だけ否決になります。
また決議方法も通常の民事再生では債権者集会での投票による決議、債権者集会前の書面投票と債権者集会での投票を併用する決議、債権者集会を開催せず書面投票のみによる決議、の3種類がありますが、個人再生は書面決議のみです(なお、給与所得者等再生ではこの書面決議も行われません)。
さらに、通常の民事再生では、監督委員が選任され手続全般の監督を行い、再生計画が認可された後の弁済についても一定期間監督しますが、個人再生で選任される個人再生委員は裁判所から指定された職務のみ行い、弁済を監督することはありません。
なお、千葉地方裁判所およびその支部では、弁護士が代理人として個人再生の申立てを行った場合は、原則として個人再生委員は選任されません。
以上が、通常の再生手続きと個人再生の大まかな違いになります。