交通事故の慰謝料の増額事由にはどのようなものがありますか?
1 交通事故の慰謝料
交通事故における慰謝料には、①傷害慰謝料(入通院慰謝料)、②後遺障害慰謝料、③死亡慰謝料、の3つのパターンがあります。
そして、これ以外のもの、例えば大事にしていた自動車が壊れたことに対する慰謝料や、怪我はしなかったけれども事故に遭ったことそのものに対する慰謝料などは、原則として認められません。
2 慰謝料の額の決め方
上記3種類の慰謝料は、弁護士が代理人として交渉する場合や裁判で争われることになった場合、「民事交通事故 損害賠償額算定基準」という書籍(通称「赤い本」と言います。)に記載される基準に基づいて算定されます。
そして、この基準を用いる際は、傷害慰謝料であれば入通院の期間と怪我の程度(重傷か軽傷か)、後遺障害慰謝料であれば後遺障害等級、死亡慰謝料であれば扶養する家族の人数等の類型的な事情しか考慮しないのが原則です。
もっとも、そのように類型的に算出することが実態にそぐわないような例外的なケースでは、この基準より増額されることもまれにあります。
3 通常より増額されるケースとは
⑴ 加害者に故意もしくは重過失がある場合
交通事故が加害者の故意や重過失によって引き起こされたなど、事故態様が通常の事故と比較して悪質であることは、慰謝料の増額事由になります。
具体的には、無免許運転、ひき逃げ、酒酔い運転、著しいスピード違反、殊更な信号無視、薬物等の影響により正常な運転ができない状態での運転といったものが挙げられます。
⑵ 加害者に著しく不誠実な態度等がある場合
加害者に著しく不誠実な態度がある場合、それにより被害者の心情が害されることから、このような事情も慰謝料の増額事由となります。
これまでの裁判例では、無免許、飲酒運転、信号無視で歩行者と衝突しだだけでなく、頭部から大量の血を流して倒れている被害者に対して怒鳴りつけて持ち上げて揺すり、投げ捨てるように元に戻したといった加害者の態度を加味し、基準の約2倍の金額の死亡慰謝料を認めたものがあります。
⑶ 被害者の親族が精神疾患に罹患した場合
これは死亡事故の場合に認定されることが多いものです。
裁判例では、被害者の死亡により親族がPTSDを発症し、今後も長期にわたって治療を継続する必要がある場合などに認められるケースがあります。
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