交通事故における同乗者の慰謝料
1 2つの自賠責保険が使えることがある
2つの車両が関わる事故で、運転手双方に過失が生じる事故の場合には、同乗者はそれぞれの車両の自賠責保険、つまり2つの自賠責保険を使うことができるケースがあります。
たとえば、信号が無い交差点において、AとB双方の車両の運転手が、安全確認不十分のまま交差点内に進入し衝突した場合について考えてみます。
この場合、双方の車両の運転手に過失が生じることが通常ですが、A車両の同乗者は、Aの自賠責保険もBの自賠責保険も使うことができることがあります。
自賠責保険は、傷害分が、1つの自賠責保険につき、治療費、交通費、休業損害、慰謝料など傷害分の合計額について120万円を上限としています。
そのため、2つの自賠責保険を使うことができることになれば、傷害分の上限は240万円になります。
保険会社から早期に一括対応が打ち切られた場合であっても、自賠責保険から立て替え分の治療費等を回収する方法が有効であることも多いです。
また、2つの自賠責保険を使える場合には、相手方が任意保険に加入していない場合であっても、しっかりとした治療を受けた上で自賠責保険から回収する手段が有効であることも多いです。
2 過失相殺されないことがある
運転手と同乗者が、身分上、生活関係上一体をなすとみられる関係にある者と評価される場合、同乗者も運転手と同じく過失相殺がされます(最判昭和42年6月27日、いわゆる被害者側の過失)。
「身分上、生活関係上一体と評価される者」の範囲については争いがあるものの、生計が同一である夫婦や親子は含まれると考えられています。
一方で、友人や会社の同僚、上司、生計が異なる恋人などは、身分上、生活関係上一体と評価される者ではないと考えられています。
同乗者が、運転手と、身分上、生活関係上一体と評価される者ではない場合には、運転手に過失が生じる場合であっても、特殊な事情がない限り、同乗者は過失相殺されません。
3 保険会社が提案する慰謝料の金額に注意
慰謝料については、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
保険会社からの示談の提案については、自賠責基準や任意保険基準などによってなされるため、相場より低額であることも少なくありません。
たとえば、治療期間120日(実治療日数40日)の他覚的所見のないむちうち症の方の場合、傷害慰謝料は、自賠責基準では34万4000円(40日×2×4300円)である一方、相場と言われる弁護士基準(裁判所基準)では67万円となります。
この場合において、保険会社からの提案は自賠責基準によるものであることがあります。
また、14級の後遺障害が認定された場合の自賠責基準の後遺障害慰謝料は32万円である一方、弁護士基準(裁判所基準)では、110万円となりますが、この場合でも、保険会社からの提案が自賠責基準によるものであることがあります。
参考リンク:交通事故における弁護士基準での慰謝料
保険会社から示談金の提示があった場合には、示談に応じる前に、当法人にお気軽にご相談ください。
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