過失割合の修正要素にはどのようなものがあるのか
1 過失割合と修正要素
交通事故における過失割合は、事故形態によって類型的に決まる基本過失割合と、事故当時の細かい事情に基づく修正要素によって決まります。
基本過失割合は、例えば以下のような類型によって決まります。
・車対車や車対歩行者、車対二輪車など、双方の当事者が何の車両に乗っていたのか
・交差点や丁字路など、どのような場所で起きた事故か
・信号の有無や色はどうだったか
・どのような衝突方法だったか
など
基本過失割合がある程度類型的に決まるのに対して、修正要素は事故当時の個別具体的な事情が関係するため、一概に判断しづらい部分があります。
以下では、修正要素としてどのようなものがあるのかについて説明します。
2 修正要素の具体例
⑴ 事故当時の状況に注目した修正要素
事故当時の状況に注目した修正要素として、例えば、事故が「夜間」に発生したことが修正要素として考慮される場合があります。
「夜間」とは、日没時から日出時までの時間のことを指します。
この時間帯だと、車両から歩行者を発見することは必ずしも容易ではありません。
それに対し、歩行者からは車両のライトにより車両を容易に発見できるといえます。
そのため、夜間における車両対歩行者の事故においては、歩行者の過失割合の加算事由とされる場合があります。
⑵ 道路の性質に注目した修正要素
「幹線道路」とされる交通量の多い道路に進入する際には、それ以外の道路に侵入する際と比較してより注意することが求められます。
そのため、幹線道路を走行する側に有利なように過失割合が修正されます。
例えば、幹線道路に路外から進入しようとする車両と、幹線道路走行中の車両との事故の場合では、路外進入車両の過失割合の加算事由とされることがあります。
事故現場となった道路が「幹線道路」にあたるか否かは、各地の道路状況、交通事情等から常識的に判断されます。
「幹線道路」とは、歩車道の区別があり、車道幅員がおおむね14メートル以上で、車両が高速で走行する、通行量の多い国道や一部の都道府県道が想定されています。
⑶ 当事者の性質に注目した修正要素
例えば、事故に遭った歩行者が「幼児」「児童」「高齢者」「身体障害者等」であったかも、修正要素となります。
これらの者については、交通弱者であることが分かるので、相手方当事者もその動向を注意して運転等する必要があるとして、過失割合の修正がなされます。
ここでいう「幼児」は6歳未満、「児童」は6歳以上13歳未満、「高齢者」はおおむね65歳以上の者を指します。
⑷ 当事者自身の行為に注目した修正要素
基本的過失割合については、事故形態から類型的に判断されます。
一方で、基本過失割合では考慮しきれない当事者の過失については、「著しい過失」「重過失」等として、修正要素とされています。
このような過失がある場合には、過失割合が大幅に加算される可能性があります。
「著しい過失」の例として、以下のようなものが挙げられます。
・携帯電話で通話しながら運転していた場合
・スマートフォンの画面を見ながら運転していた場合
・その他、わき見運転と同視すべき著しい前方不注意
・酒酔い運転に至らない酒気帯び運転
・時速15km以上30km未満の速度違反
・著しいハンドルまたはブレーキの操作ミス
「重過失」の例として、以下のようなものが挙げられます。
・道交法上の酒酔い運転や無免許運転
・居眠り運転
・時速30km以上の速度違反
・あおり運転
・その他、故意に匹敵する程度の悪質な運転による事故
3 交通事故の過失割合については弁護士に相談を
交通事故の過失割合がどのように判断されるかによって、受け取ることができる治療費などの金額にも影響が及びます。
交通事故における治療費と過失割合の関係については、こちらの記事もご覧ください。
過失割合が争いとなるケースでは、できるだけご自分の過失が適切な割合で認定されるよう、証拠等をそろえてしっかりと主張をすることが重要となります。
基本過失割合や修正要素について、どのように評価してどのように主張するかについては、交通事故に対応する上でのノウハウが必要となります。
交通事故の被害に遭って、過失割合についてお悩みの方は、交通事故への対応を得意とする当法人の弁護士にご相談ください。