車両の損害について
1 修理費と経済的全損
交通事故により自己の車両が損壊し、その責任が相手方にある場合、相手方に対し、車両の修理費用を請求することができます。
しかしながら、車両の時価や損傷の程度によっては、修理費が車両の時価額を上回る場合があります。
これを「経済的全損」といい、相手方は、修理費ではなく車両の時価額を賠償すれば足りるとされています。
このため、相手方としては、修理費と車両時価額のうち、いずれか安い方の金額を支払えば、賠償義務を果たしたことになります。
このような取り扱いがされる理由は、車両時価額が支払われたのであれば、被害者としては、同種の車両を中古車市場から調達し、事故前の状態に復することができるため、車両時価額を上回る修理費の支払までは必要がないとの理由によるものです。
2 車両買替費用
車両を買い替える際には、車両の登録費用などの手続費用がかかりますが、この費用についても、相手方に請求することができます。
3 評価損
修理がなされても、事故に遭い損傷したとの事実それ自体が、当該車両を購入しようとする消費者から敬遠され、事故歴のない同種車両に比べ、車両の市場価値が下がってしまうとされています。
この価値低下を評価損といいます。
評価損の算定方法ですが、これまでの裁判例においては、初度登録から3年程度の車両であり、外国車や国産の大型車など、商品価格が高い車両について、修理費に一定割合(初度登録からの経過年数や、損傷箇所などを考慮し、多くは1割ないし3割程度)を乗じた金額を、評価損として認める傾向にあります。
ただし、不動産鑑定士による土地の評価のような、公の基準(公示地価など)があるわけではなく、裁判例ごとにばらつきがあるのが実情です。
4 代車費用
車両の修理のため事故の車両を使用できない場合、修理期間中、レンタカーを利用するための費用を相手方に求めることができます。
これを代車費用といいます。
代車費用は、被害に遭った車両と同種あるいは同等の車両を、修理期間中に借用するのに必要な費用の範囲に限られます。
このため、被害車両よりも高額な車両を借りたり、修理期間を超えて借用したりすると、上記必要な費用の範囲を超えてしまいます。
超えた部分について、相手方に賠償する義務はありません。
代車費用についての賠償の範囲を巡る紛争を避けるために、代車を借りる前に、相手方(あるいは相手方が契約する保険会社)と、代車の費用及び期間について確認し、了承を得ておくのがよいでしょう。
5 弁護士にご相談ください
上記のとおり、車両の損害については、修理費だけではなく、様々な損害項目や留意点があります。
疑問がある場合には、交通事故を得意とする弁護士に相談されることをおすすめします。