Q&A
以前に借り換えをしているのですが、過払い金の返還請求をすることはできますか?
1 借り換えのパターン
住宅ローンを借り換えるといった場合、通常は、別の金融機関から借り入れて既存の住宅ローン債務を返済することを指しますが(金利が下がる等のメリットがある場合に行われます)、過払い金の返還請求で問題になる借り換えは、同一業者と借り換えを行う場合です。
なお、過払い金の返済請求で問題となる借り換えとは、典型的には、貸付利率を下げることや極度額を増額する目的で行われ、新たな契約に基づく借入金を従来の契約の残債務の返済に充てることになります(実際には、従来の契約の残債務を新たな契約の債務に付け替えるだけですので、現金の移動はありません)。
以下では、同一業者と借り換え(契約の切り替え)を行った場合に問題となる点についてご説明します。
2 不動産担保ローンへの(からの)切り替え
消費者金融業者に対する過払い金返還請求で多く問題になる契約の切り替えは、無担保のローンから不動産担保ローンに切り替えるケースです(不動産担保ローンから無担保のローンに切り替えることもあります)。
具体的に問題となるのは、無担保ローンの取引と不動産担保ローンの取引を一連の取引として過払い金の計算ができるかどうかという点です。
一連の取引とした場合、無担保ローンの取引と不動産担保ローンの取引を別個のものとして計算する場合よりも、通常、過払い金の金額は多くなります(なお、切り替え後の取引の利率が利息制限法の上限利率以下の場合、切り替え後の取引のみでは過払い金は発生しません)。
また、一連の取引とした場合、過払い金の消滅時効の起算点も、切り替え後の取引の終了時になります(別個の取引とした場合、切り替え前の取引から生じた過払い金の時効の起算点は切り替え前の取引が終了した時点になります)。
一連の取引とすることができるか否か(一連性があるか否か)の判断で重要なのは、取引の形態です。
例えば、切り替え前の無担保ローンがリボルビング方式で、切り替え後の不動産担保ローンもリボルビング方式の場合、一連性を肯定する裁判例が多く出されています。
逆に、切り替え前の無担保ローンはリボルビング方式であるものの、切り替え後の不動産担保ローンが証書貸付(最初にまとまった金額を貸し付け、後は返済だけを行う方式)の場合は、最高裁判決により一連性が否定されています。
この場合、不動産担保ローンは利息制限法の上限利率以下であることも多いですので、無担保ローンの取引で生じた過払金のみ請求できることになりますが、無担保ローンの取引終了時(契約切り替え時)が10年以上前の場合、時効により請求できなくなります。
3 無担保ローンから無担保ローンへの切り替え
無担保ローンから無担保ローンへ切り替える場合も、一連性が認められるかどうかで最も重視されるのは取引形態です。
上記の不動産担保ローンの場合と異なるのは、切り替えの前後で無担保という点でも共通しているので、例えば無担保リボルビング方式から無担保リボルビング方式へ切り替えた場合は、業者側から一連性を争われることはあまりないという点です。
しかし、リボルビング方式から証書貸付(またはその逆もあります)へ切り替えた場合は、一連性が争いとなり、それを否定する裁判例も散見されます。
以上が、借り換えが行われている場合に過払い金返還請求で問題となる点のご説明になります。
借り換えを行っている場合は、ご相談の際、必ず担当弁護士にその旨をお伝えください。
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