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過払い金で和解する場合の相場
1 和解相場の変遷
本稿執筆時点では、過払い金返還請求が広く行われるようになってから15年以上が過ぎています。
過払い金返還請求は、訴訟提起された案件を含め、多くの案件が和解で解決していますが、和解する際の相場は、業者にもよりますが、時期により変遷があります。
例えば、大手消費者金融会社であるアイフルは、かつては利息を含む十分な金額での和解ができていましたが、その後経営が悪化し、事業再生ADRを行うこととなったため、十分な金額の返還を受けるためには、原則として訴訟をして判決を獲得しなければならなくなりました。
現在は、事業再生ADRは終了し、和解基準も多少は上がったような印象も受けますが、十分な金額の返還を受けるためには訴訟提起が必須であるという点は変わっていません。
本稿では、過払い金返還請求の和解における現時点の相場を検討したいと思いますが、過払い金返還請求自体が下火となっており、案件数も減っていますので、業者毎の厳密な検討は困難です。
そのため、以下の説明は傾向という程度のものとして理解いただければと思います。
また、取引の分断等の実質的な争点がないケースを前提としていますので、争点があるケースは個別に弁護士に相談してください。
2 訴訟をしない場合の相場
過払い金については複数の計算方法があり、最初にこの点についてご説明します。
まず、過払い金を請求する側は、例外なく、過払い金利息の発生を前提として計算し、最終取引日時点の過払い金元金と利息を算出します。この過払い金元金に対しては、最終取引日以降も年5%(改正民法が適用される場合は3%)の利息が発生します。
他方、業者側は、過払い金利息が発生しないことを前提として計算しますので、算出されるのは過払い金元金のみとなります。利息が発生しないことを前提として計算していますので、業者側が算出する過払い金元金は、利息が発生することを前提として計算する請求側の過払い金元金以下となります。
訴訟を提起しない場合の和解としては、請求側計算の過払い金元金全額、請求側の過払い金元金を一定の割引率で減額した金額(例えば過払い金元金の8割など)、業者側計算の過払い金元金全額、というような基準があります。
もちろん、和解交渉はケースバイケースですので、増減はあり得ますが、一般的な傾向として、利息の全部または一部も含めた和解は困難であると言えるでしょう。
また、消費者金融よりもクレジットカード会社の方が、和解基準は高い傾向にあると言えます。
3 訴訟をする場合の相場
訴訟をして判決になると、実質的な争点がない事案の場合、請求側の請求金額全額を請求者に対して支払うよう業者に命じる判決が下されることになります。
そのため、実質的な争点がない事案では、請求側の金額を前提とし、多少の譲歩をした金額が和解の相場になります。例えば、利息を含めた金額が126万4532円の場合に、125万円で和解する、というような感じです。