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相続人が複数の場合の過払い金返還請求
1 過払い金の相続
例えばAが死亡し、妻であるB、長男のC、長女のDがAを相続したとします。
Aが遺言を作成していなければ、Bら相続人は民法が定める法定相続分に従ってAの遺産を相続します。具体的には、Bの法定相続分は2分の1、CおよびDの法定相続分は各4分の1になります(ケース①)。
また、Aが死亡し、妻のBとAの弟のEが相続人になる場合は、Bの法定相続分は4分の3、Eの法定相続分は4分の1になります(ケース②)。
過払い金返還請求権は、貸金返還請求権や損害賠償請求権等と同じ金銭債権ですので、相続の対象となります。
2 過払い金返還請求権は相続人全員がそろって行使する必要があるか
金銭債権は、預貯金を除き(預貯金も銀行等に対する金銭債権です)、被相続人の死亡により、相続人が法定相続分に従って当然に相続します。
「当然に」というのは、遺産分割を経ることなく、という意味です。
そのため、上記ケース②で、例えばBとEと疎遠で連絡を取りたくないという場合でも、Bは、単独で、4分の3に相当する金額について過払い金の返還を消費者金融等に請求することができます(例えば過払い金全体で200万円の場合、Bはそのうち150万円を相続しますので、その金額の返還を請求できるということになります)。
なお、単独で行使できるとしても、法定相続分を確定する必要がありますので、相続人の範囲を確定するための戸籍類は収集しなければなりません。
3 特別代理人は不要
ケース①で、CとDが未成年者の場合、B、CおよびDで遺産分割協議を行う場合は、CとDについてそれぞれ特別代理人を選任しなければなりません。
CとDが未成年者の場合、母であるBが法定代理人となりますが、遺産分割協議では、BC間、BD間では利益相反が生じるためです。
しかし、過払い金返還請求権については、被相続人の死亡により相続人は遺産分割手続を経ることなく法定相続分に従って相続しますので、CおよびDが相続した過払い金返還請求権について、Bが法定代理人として返還請求を行っても利益相反にはなりません。
そのため、Bは、自らが相続した過払い金とあわせて、CおよびDの代理人としてCおよびDが相続した過払い金の返還を請求することができます。