ＣＦＪ合同会社の過払い金

ＣＦＪ合同会社は、ディック、アイク、ユニマットなどが合併してできた消費者金融会社ですが、２００９年に新規貸付け業務を停止し、２０２１年には債務者からの貸付金の返済の受付もやめました（ただし、返済の受付を停止した時点でＣＦＪ合同会社に対して債務が残っていた方は、そのほとんどが利息制限法の上限利率で再計算すると過払い状態になっていたと考えられますので、返済受付停止は、ＣＦＪ合同会社が権利を放棄したというよりは、返済しなければならない過払い金の顕在化を食い止めるために行った、と言えるでしょう）。

消費者金融会社の利益は貸付金に付される利息を回収することによってもたらされますので、このように、新規貸付も貸付金の回収も止めてしまったＣＦＪ合同会社は倒産するのではないかとご不安な方もいらっしゃるかもしれませんが、それほど心配する必要はないと思われます。

まず、ＣＦＪというのは、シティ・フィナンシャル・ジャパンの略称であり、世界的な金融グループであるシティグループに属する会社です。

また、ＣＦＪ合同会社は無担保ローンのほかに不動産担保ローンを扱っていましたが、２０１９年にその不動産担保ローンの事業を会社分割という方式によりレイクで有名な消費者金融会社である新生フィナンシャル株式会社に譲渡し、その代金を取得しています。

つまり、営業を停止し、過払い金を含む負債を返済して会社を閉鎖するということはあり得ますが、返済不能により倒産するということはあまり想定できません。

他社と比較したＣＦＪ合同会社に対する過払い金の返還請求訴訟の特徴は、訴訟においてＣＦＪ側が大量の主張書面およびＣＦＪ側に有利な裁判例を提出して徹底的に争ってくるという点にあります。

ＣＦＪ側の主張の中には、商事消滅時効など訴訟ではまず認められないような内容のものもありますが、期限の利益喪失後の遅延損害金利率適用に関する主張については、ＣＦＪの主張をそのまま採用する裁判例はほぼないですが、返済に遅れた期間（返済期限後、実際に返済した日までの日にち）については遅延利率を適用する裁判例が主流になっています。

なお、期限に遅れて返済した場合、遅れた期間については遅延損害金利率に基づく金額を徴収している消費者金融会社が多いですが、ＣＦＪの一部商品については、期限に遅れて返済した場合でも遅延損害金を全く徴収していないことがあるため、信義則を根拠として遅延損害金利率の適用を一切否定する裁判例もあります。

他方、返済期限に遅れた場合、次の貸付を受けるまで遅延損害金利率を適用し、ＣＦＪに有利な判決を出す裁判例も散見されます。

ＣＦＪ合同会社の主張の中で、請求側にとって最も厄介なのは、貸付停止措置を執った時点を起算点とする消滅時効の主張です。

具体的には、ＣＦＪは２００９年に貸付業務を廃業し既存顧客も含めて新たな貸付を停止しましたので、その停止した時点を起算点とした消滅時効を主張してきます。

貸付停止措置を執った時点を起算点とする消滅時効の主張は、アコムやアイフルなど他の消費者金融会社も主張してくることがありますが、ＣＦＪのケースが厄介なのは、貸付業務を廃業しているため、新たな貸し付けが見込めないことが明確だからです。

この争点について、本稿の執筆者は、地裁判決で勝訴した経験がありますが、現在のＣＦＪとの訴訟では複数のＣＦＪ勝訴判決が提出されおり、今後の訴訟は厳しくなることが予想されます。

ＣＦＪ側の主張が認められる場合、ＣＦＪに対しては、訴訟提起日から遡って１０年前までに発生していた過払い金は消滅時効により請求できない、つまり１０年前以降に返済した金額のみ過払い金として請求できることになります。

そのため、消滅時効により請求できなくなる金額を可能な限り少なくするため、ＣＦＪに受任通知を送付する際は、催告書も兼ねた書面を内容証明郵便で送付して、ＣＦＪに到達した時点で時効の進行が一時ストップするようにします（これを法律用語で時効の完成猶予といいます）。