Q&A
自己破産をしたら、パソコンなどの財産もなくなるのでしょうか?
1 自己破産手続の趣旨
自己破産手続では、破産管財人が破産者の財産を処分してお金に換え、それを破産債権者に配当することになります。
そのため、自己破産手続を行うと、身の回りの財産すべてが処分されると誤解している方もいらっしゃいます。
本稿では、千葉地方裁判所における一般消費者の方の破産手続を前提に、自己破産手続で処分される財産についてご説明します。
なお、タイトルにあるパソコンについて、クレジットで購入している場合は、所有権留保によりクレジット会社から返却を求められる場合があります。
これは自己破産に限らず任意整理や個人再生でも同様ですので、ここでは触れません。
2 民事執行法131条
民事執行法131条は、「次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。」とし、1号に「債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」、6号に「技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)」を定めています。
強制執行手続きで強制的に換価処分ができない財産は、破産手続きにおいても換価処分されることはありません(破産法34条3項)。そのため、上記の条文に当てはまる財産については、破産手続で換価処分されることはありません。
ちなみに、民事執行法131条6号について、昭和55年の地裁判例で開業医(内科・小児科)のレントゲン撮影機が差押禁止財産とされましたが、同じく開業医(眼科)の治療機器(レーザー光線照射装置)は、平成10年の地裁判例で差押禁止動産には該当しないと判断されています。
3 評価額20万円以下の場合
千葉地方裁判所では、時価20万円以下の家財道具は「換価等を要しない財産」とされ、破産管財人によって換価処分されることはありません。
中古のパソコンでも、かなりのハイスペックでないと時価が20万円を超えることはないですので、一般消費者の方の破産手続でパソコンが換価処分の対象になることはまずありません。
なお、時価20万円以下の自動車、オートバイも家財道具と同様に「換価等を要しない財産」とされています。
4 評価額が20万円を超えている場合
財産の評価額が20万円を超えていても、すべての財産をあわせた金額が99万円以下であれば、千葉地方裁判所の場合、原則として自由財産の拡張を認める運用がされています。
そのため、時価25万円のかなりハイスペックなパソコンがあったとしても、その他の財産とあわせて99万円以下であれば、原則として自由財産の拡張が認められ、手元に残すことができます。
これは、例えば時価50万円の自動車がある場合も同じです。
他方、99万円を超えている場合は、超えている金額について新得財産(破産手続開始後に支給された給料等)から破産財団に組み入れることで対応することが多いと思いますが、ケースバイケースの判断が必要になりますので、弁護士にご相談ください。
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