Q&A
自己破産をする際に給料の差し押さえを受けることはありますか?
1 破産手続と否認権
消費者金融会社のM社は、弁護士から任意整理または個人再生の受任通知を受け取った場合、3か月以内に進捗が無い場合には訴訟提起を行います。
それでもなお進捗が無い場合には、判決を取得して給料等の差押さえを行います。
そのため、債権者にM社が含まれている場合や、任意整理でM社をその対象にする場合には、訴訟も考慮してスケジュールを組む必要があります。
一方で自己破産の手続きにおいて、破産管財人は偏頗弁済(特定の債権者に対する弁済)を否認し、債権者が弁済として受領した金額の返還を請求することができます。
これを「否認権」と言います。
弁護士から自己破産の受任通知を受け取った後に行った差押さえにより受領した金銭についても、否認権の対象となります。
そのため、弁護士が自己破産の受任通知をM社に送付した場合、M社が訴訟提起をすることはまずありません。
また、M社と同じグループの債権回収会社であるA社に債権を譲渡することがあります。
2 自己破産の受任通知前の差押さえ
弁護士が自己破産の受任通知を行う前に、債権者が債務者の預貯金について差押さえを行い、その支払いを受けた場合、原則として破産管財人による否認の対象にはなりません。
しかし、債権者が給料の差押さえを行った場合、債務者が勤務先を退職しない限り差押さえは継続しますので、毎月の給料から一定額が債権者に支払われることになります。
この場合、弁護士から自己破産の受任通知を受け取った後に支払いを受けた分は、否認権の対象になります。
差押さえを行ったのが、破産法について熟知している金融機関の場合でも、弁護士から自己破産の受任通知を受け取った後も差押さえを継続することが多いようです。
そのため、給料の差押さえを止めるためには、速やかに破産のための費用や書類を準備して、裁判所で申立てを行う必要があります。
その場合には、現に給料の差押さえを受けていますので、費用の準備が一番の問題になるかと思います。
3 自己破産の受任通知後
1のとおり、M社の場合、自己破産の受任通知をした後は訴訟を提起しません。
他方で、消費者金融のA社や、信販会社のL社などは、弁護士の受任から一定期間を経過すると訴訟を提起することがあります。
本稿の執筆者が担当した案件では、このようなケースで給料の差押さえを受けた事案はありません。
しかし、訴訟を提起された場合にはできるだけ速やかに費用を準備し、破産の申立てを行った方がよいでしょう。
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