Q&A
自己破産したら、海外旅行に行けなくなりますか?
1 破産法の規定
破産法37条1項は、「破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。」と規定しています。
これは、①破産手続に対する破産者の協力(説明義務の履行など)を確保し、かつ②破産手続に対する妨害を防ぐこと(逃走や財産等の隠匿など)を目的として定められたものです。
なお、平成16年改正前の破産法ではこの義務に違反する行為は刑事罰の対象とされていましたが、改正により対象から外されました。
ただし、この義務に違反した場合、破産法252条1項11号の免責不許可事由(この法律に定める義務に違反したこと)に該当し得ます。
2 制限の対象となる行為
破産法37条1項の対象となる行為は、典型的には破産手続中の転居です。
転居する場合は、前もって依頼している弁護士に伝えて許可を得る手続きをしなければなりません。
一時的な外出については、日帰りであれば制限の対象になりませんが、宿泊を伴う場合については考え方が複数あり、1泊なら制限の対象にならないが2泊以上なら許可が必要になる(ただし海外旅行や入院の場合は1泊でも許可が必要)と考える見解などがあります。
この点については、各裁判所で基準を設けている場合もありますので、その場合はその基準にしたがうことになります。
3 海外旅行について
上記のとおり、破産手続中は海外旅行が一切禁止されるということはなく、裁判所の許可があれば海外旅行も可能です(なお当然ですが、破産者が出頭しなければならない債権者集会期日等を期間に含む海外旅行の申請は認められません。また、債権者集会期日等の前日に帰国するというスケジュールでの申請も、そのスケジュールで海外渡航する必要性がなければ認められない可能性もあります。海外渡航が予定されている場合は、債権者集会期日の調整の際に、渡航期間中およびその直前直後を期日候補日から外しましょう)。
そして、最も件数の多い一般の勤労者の方の破産の場合、破産手続に対する妨害行為はまず想定できず、また、現在では海外に在住している方との連絡もネットを使うことによりかなり容易になっていますので、破産者本人に実働してもらう作業が残されているような場合、例えば破産管財人が任意売却中の破産者の自宅の中にある破産者の所有物(今後の生活で使うもの)の運び出し作業などが残されている場合を除き、海外旅行も許可されるものと思われます。
なお、勤務先の慰安旅行で海外に行く場合や海外出張は問題ないですが、借金の原因が浪費やギャンブルの場合に自己資金で海外旅行に行くことは、それが破産手続(免責手続)に大きな影響を与えるというわけではありませんが、控えたほうがよいでしょう。
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