Q&A
自己破産すると賃貸契約はどうなりますか?
1 自宅の賃貸借契約の帰趨
消費者金融やクレジットカードの負債で自己破産手続を行う方のほとんどは、住まいはアパート等の賃貸で、口座振替または振り込みで家賃を支払い、消費者金融等への返済が滞った場合でも、家賃の滞納はありません。
このようなケースでは、自己破産を理由に賃貸借契約を解約されることはなく、破産することが原因で賃貸に関して何らかの問題が生じることはありません。
本稿では、問題となるケースについて、千葉地方裁判所の破産手続の実務を前提にご説明します。
2 家賃の滞納がある場合
⑴ 例えば家賃の支払いが1か月遅れになっている場合、できるだけ破産申し立てまで遅れを解消しておくのが望ましいですが、解消できなかったとしても、破産手続では通常問題にはされません。
法律的には、遅れている金額について家主を破産債権者として債権者一覧表に記載しなければならないということになると思いますが、債権者一覧表への記載を求められることはまずないと思われます。
⑵ 家賃の支払いが数ヶ月分以上遅れている場合は、通常は家主から賃貸借契約を解除され退去を求められると思いますが、家主の厚意で賃貸借契約は継続できているケースもあります。
ただ、家賃が3、4か月分以上滞納している場合は、その金額も大きくなりますので、賃貸借契約が継続しているとしても、債権者一覧表への家主の記載は必要になるでしょう。
この場合は、破産手続を行うことについて事前に家主に話し、理解を得ておく必要があります。
3 家賃がクレジットカード払いの場合
⑴ 最近では、賃貸保証をクレジットカード会社が行い、家賃の支払い方法を当該クレジットカード会社のカード払いに限定している賃貸物件も増えています。
このようなケースで、当該クレジットカード会社を相手方として任意整理を行う場合、または自己破産ないし個人再生を行う場合は、クレジットカードが使えなくなるため賃貸借契約がどうなるのか不安になる方も多いのではないでしょうか。
この点については、実務上、統一的な決められた処理方針は見当たりませんが、本稿の執筆者が取り扱った案件では、賃料の支払方法は口座振替に変更してもらい、クレジットカードは使えなくなるもののクレジットカード会社による賃貸保証は継続してもらえたというものがあります。
少なくとも、賃貸の条件として賃料の支払方法がクレジットカードに限定されている場合に、クレジットカードが使えなくなることを理由に賃貸借契約を解除されたことはありません。
⑵ 上記⑴のケースは賃貸借契約開始後に自己破産等を行うことになった場合のご説明ですが、弁護士に自己破産を依頼した後に転居する場合は事情が異なります。
つまり、弁護士に自己破産を依頼すると信用情報に事故情報が登録されますが、事故情報が登録された後にクレジットカード会社が賃貸保証を行う物件の申し込みを行っても、クレジットカード会社はCIC等の指定信用情報機関に加盟していますので、審査で落ちてしまう可能性があります。
その場合は、親族の連帯保証でも貸してくれる物件か、または信用情報による審査を行わない会社が賃貸保証を行う物件を探すことになります。
自己破産すると引っ越しができなくなりますか? 家賃を滞納しているのですが、自己破産の手続き中に支払いをしてもいいですか?